倉敷の大原美術館を訪れると、小学校や中学校の頃、教科書で学んだことのある梅原龍三郎、ゴッホ、ルノアール、セザンヌ、、コロー、ミレー、ピカソ等々と、美の巨匠達の名画、彫刻、版画、陶器などいろいろな美のほんものに会えることは、有難いことだと思いました。
その中で、版画の棟方志功さんの作品を見て、その内面に素晴らしい信仰がしっかりとあることを知り、とても嬉しく思いました。
志功氏曰く、「いままでの自分が持っている一ツの自力の世界、自分というものは自分の力で仕事をするというようなことからいや、自分というものは小さいことだ。自分というものは、なんという無力なものか。何でもないほどの小さいものだという在り方、自分から物が生まれたほど小さいものはない。そういうようなことをこの真宗の教義から教わったような気がします」
我が脱落して、大生命に生かされ生まれるエネルギーで彫る版画は、目からウロコが落ちる歓喜、美しさに満ちています。
「アイシテモ愛しきれない オドロイテモ驚ききれない ヨロコンデも喜びきれない カナシンデモ悲しみきれない それが版画です」と志功氏は語っている。
志功氏の下積み時代をささえてきた妻チヤさんは、お金になる作品の依頼があってもただ、お金ほしさに仕事を受けるというやりかたではありませんでした。版画に生命がけで彫る夫への純粋な愛からでした。「志功の作品を真から理解して下さる方のみに、作品を知って頂ければ良い」と志功氏を理解していない仕事を断ったのでした。そこに高き美のレベルの版画が生まれたといえます。志功氏は、一九五六年ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に『湧然する女者達々』を出品して、日本人として初めて国際版画大賞、一九七〇年には文化勲章を受章します。一九七五年に亡くなりましたが、新聞記者の「結婚して一番幸せを感じたのはいつですか?」の質問に、チヤさんは「今です」と答えています。
夫唱婦随の全てを志功氏に捧げて今を全力投球で生きた、満足感から出た言葉でした。御仏を信じて全てを「今」捧げる生活の中に、万人を魅了する志功氏の版画が生まれたのでしょう。
私達の生活も、肉体の我に生きるにあらず、「我れ神の子なり」の真理を生きるとき、それぞれの偉大な人生版画が生み出され、万人に喜ばれる生きかたが出来てまいりますね。
ますます、三正行に励み「神・自然・人間」本来一体であるとの自覚を深め偉大なる使命に邁進してまいりましょう。あなたの人生で一番幸せを感じるのはいつですか?今です。